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診療報酬改定DXの実現に向けた動き、歯科医院にとっての影響とは?

診療報酬改定DXの実現に向けた動き、歯科医院にとっての影響とは?

2023年6月16日に閣議決定された「骨太の方針2023」の中で取り上げられている「診療報酬改定DX」に、大きな注目が集まっています。2年に1回行われる診療報酬改定は医療保険制度の根幹とも言えるだけに、歯科医院をはじめとする医療機関に大きな影響を与えることが予想されます。この記事では、診療報酬改定DXの実現に向けた動きについて解説します。

診療報酬改定DXとは

「診療報酬改定DX」とは、診療報酬改定に関わる作業をDX化(デジタルトランスフォーメーション化)する取り組みを指します。診療報酬改定は原則2年に1回行われていますが、そのスケジュールはとてもタイトなものです。通常、診療報酬改定の内容が公示されるのは3月で、改定施行日は4月1日となっており、この時点で医療機関は新しいルールに基づいて診療報酬を算定する必要があります。

そのため、電子カルテやレセコンを扱うベンダーは公示から施行までのわずかな期間で公開された資料を読み解き、システムの改修を進め、リリースまで進めなければなりません。ベンダーやエンジニアの作業負担が増えるのはもちろんですが、医療機関側にも改修費用やランニング費用の負担がかかるという現状がありました。また、わずかな期間にシステムが更新されるため、医療機関のスタッフが慣れないまま施行日を迎えるケースも多く、現場に少なからず混乱をもたらすという指摘もあります。

こうした課題を改善するため、現在政府の主導により取り組みが進められているのが診療報酬改定DXです。自民党政務調査会が今年5月にまとめた「医療DX令和ビジョン2030」の提言によると、診療報酬改定DXの具体的な取り組みとして以下の内容が挙げられています。

1. 医療機関やベンダーの負担を軽減するため、各ベンダーが共通して活用できる診療報酬の「共通算定モジュール」を厚生労働省、審査支払機関、ベンダーが協力、またデジタル庁のサポートも得て作成する。 2. 現在4月となっている診療報酬改定の施行日を後ろ倒しすることで、関係各所の負担を分散させ、モジュール作業の後戻りやミスをなくす。

医療DX令和ビジョン2030より一部を改変・抜粋。

現在、2年に1回の診療報酬改定時には、膨大なテキスト情報で示された改定情報を読み解き、ロジックを解釈したうえでシステムに落とし込む必要があります。これに対し、診療報酬改定DXでは診療報酬の算定と患者の窓口負担金計算を行うための「共通算定モジュール」を作成し、全国統一の共通電子計算プログラムとして活用することを目指しています。

歯科医院をはじめとする医療機関の立場としては、診療報酬改定DXが実現することで複雑な算定ルールを理解し対応するという負担の軽減が期待できるでしょう。改定データに不備があった場合でも早急な対応が可能になるため、現場への影響も抑えられることになるでしょう。診療報酬改定DXは、デジタル技術の活用により、診療報酬改定に関わるすべての人の作業の効率化・作業負担の軽減を目指し、コスト削減を実現するための取り組みと言えるのです。

  

医療DXについて以下の記事で詳しく説明しています。ぜひ併せてご確認ください。

●関連コラム:歯科業界は医療DXでどう変わる?目指す未来とDX化で実現できること

診療報酬改定DX(共通算定モジュール)実現に向けた動き

診療報酬改定DXについては「骨太の方針2023」の中にも『「診療報酬改定DX」による医療機関等の間接コスト等の軽減を進める』との記載があり、その動きには大きな注目が集まっています。2023年6月2日に医療DX推進本部がまとめた「医療DXの推進に関する工程表」には、診療報酬改定DXの実現に向けた動きについて、具体的に以下のように示されています。

2024年度:マスタおよび電子点数表を改善、提供開始

2025年度:共通算定モジュールのα版提供開始(先行医療機関で実施、改善しながら順次機能を追加)

2026年度:共通算定モジュールの本格提供開始(機能をさらに追加しながら医療機関数を拡大)

医療DXの推進に関する工程表〔全体像〕より一部を改変・抜粋

まずは、2024年度に現状の診療報酬点数や算定ルールをマスタとして整理したものを提供。これと並行して、マスタをもとに医療報酬の共通算定モジュールの開発を進め、2025年度にα版として一部の医療機関で先行実施、改善を行いながら2026年度に本格的な運用を開始するとしています。

診療報酬改定の施行日後ろ倒しに向けた動き

診療報酬改定に関わるシステムの改修やルールの理解に加えて、医療機関やベンダーの負担となっているのがその実施時期です。具体的に点数が決まるのは2月上旬に行われる中医協答申ですが、そこから数えてもわずか2ヵ月足らずでルールが大きく変わるため、負担を感じている方も多いのではないでしょうか。

こうした負担を軽減するため、厚生労働省は2023年8月2日の中医協総会において、2024年度からの診療報酬改定の実施時期を2ヵ月後ろ倒しにすることを提案し、了承されています。これにより、2024年度以降の診療報酬改定の施行は6月1日、また初回のレセプト請求は7月10日となる見込みです。ただ、重症度や医療・看護必要度などの見直しといった経過措置がある項目については従来どおり9月末までを基本とし、薬価改定の施行についても例年通り4月1日のままにするとしています。

まとめ:業務のデジタル化・DX化を進めることが重要に

政府が診療報酬改定DXの実現を目指す背景には、診療報酬改定にまつわる作業を簡略化することで医療機関やベンダーの業務効率化を図るだけでなく、医療保険制度全体の運営コストの削減を目指す狙いがあります。

少子高齢化により医療費が圧迫されている現状を踏まえると、こうしたデジタル化、DX化の流れは今後も続くことが予想されるでしょう。歯科医院を運営するうえではこうした取り組みに対応できるよう、業務のデジタル化やDX化を進めておくことが重要と言えます。

  

医療DXについて以下の記事で詳しく説明しています。ぜひ併せてご確認ください。

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