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自然災害リスクに強い歯科医院づくり対策

自然災害リスクに強い歯科医院づくり対策

突然ですが、日本にはどのくらいの数の河川があると思いますか?国土交通省の「河川データブック2024」によると、一級河川や二級河川、その他大小含めると、約35,000以上もの河川が日本にあるそうです。お住まいの街や歯科医院のある地域にも、すぐ頭に思い浮かぶ河川があるのではないでしょうか。

この記事では、浸水災害を中心に歯科医院を取り巻く自然災害のリスクと患者さんの大切な歯科情報と診療環境を守るための対策などについて解説します。

歯科医院を取り巻く自然災害リスクと対策

1. 浸水災害の増加傾向と現状

気象庁のデータによると、1時間降水量50mm以上の年間発生回数は明らかな増加傾向にあり、過去10年間あたりで30回以上の増加が見られます。統計期間別にみると1976年~1985年の10年の平均発生回数(約226回)と比べて最近の10年(2013年~2022年)では、約1.5倍(約340回)に増加。2024年1月から直近までの観測でも、この増加傾向は続いています。

内閣府の令和5年版「防災白書」によれば、日本の年平均気温は100年あたり1.30℃の割合で上昇し、猛烈な雨(1時間降水量80mm以上)の年間発生回数も増加。地球温暖化の進行に伴い、今後も大雨や短時間強雨の頻度はさらに増加すると予測されています。

浸水リスク地域の拡大も顕著で、国が管理する洪水浸水想定区域として指定されている河川は470以上、都道府県管理の河川では1,850を超え、対象市町村は1,450にまで拡大。国土交通省の『河川事業概要2024』によれば、過去10年間に約99%の市町村で水害・土砂災害が発生しており、もはや浸水災害は「対岸の火事」ではなく「隣の火事」と言えるでしょう。

  

2. 地震リスクの常在化

日本は世界有数の地震大国です。気象庁の最新データによると、2023年だけでもマグニチュード4.0以上の地震が約300回以上発生しました。南海トラフ地震の30年以内の発生確率は70~80%と言われ、首都直下型地震の発生確率も30年以内に70%程度と予測されています。

  

3. 台風・強風被害の激甚化

近年の台風は「スーパー台風」と呼ばれるほど大型化・強力化しています。気象庁の分析によれば、2018年以降、日本に上陸または接近した台風のうち、中心気圧が940hPa以下の非常に強い勢力を持つ台風の割合が増加傾向にあります。

  

4. 土砂災害の頻発化

国土交通省の2024年発表のデータによると、全国の土砂災害危険箇所は約66万箇所に上り、その数は年々増加しています。豪雨の増加に伴い、年間の土砂災害発生件数も増加傾向にあり、2025年には全国で1,433件の土砂災害が発生しました。

歯科医院における自然災害リスクと対策

災害リスクの把握

ハザードマップを活用し、歯科医院の立地における複合的な災害リスク(浸水、地震、土砂災害等)を把握することが第一歩です。国土交通省の「重ねるハザードマップ」では、複数の災害リスクを重ね合わせて確認できるため、総合的なリスク評価が可能です。

  

建物・設備の対策

歯科医院の物理的な災害対応力を高めるには複合的なアプローチが必要です。まず耐震診断を実施し、必要に応じた補強工事で基本的な安全性を確保しましょう。浸水リスクには防水板の設置や電気設備の高所配置が効果的です。強風対策としては窓に飛散防止フィルムを貼り、看板は強度を高めて固定します。診療の継続には非常用電源が不可欠で、小型発電機や無停電電源装置の導入の検討をおすすめします。これらの対策を組み合わせることで、多様な自然災害に対する医院の耐性が大幅に向上します。

  

事業継続計画の策定

歯科医院の事業継続計画では、患者・職員の安全確保を最優先に、診療の早期再開手順、患者データへの確実なアクセス方法、必要な医療材料・医薬品の備蓄体制、災害時の連絡網整備、そして代替診療場所の事前検討を明文化します。これにより災害発生時も迅速かつ組織的な対応が可能となります。

  

保険対策

医院の建物や設備に対する火災保険に加え、地震保険や水災補償、さらには事業中断補償特約など、複合的なリスクに対応できる保険の加入を検討しましょう。2024年には保険料率の改定があり、立地条件によってはリスク評価が厳しくなっているケースもあるため、早めの対応が望ましいでしょう。

  

定期的な訓練と計画の見直し

災害時の行動計画を策定し、スタッフと定期的に訓練を行うことで、実際の災害時にも冷静に対応できるようになります。また、新たな災害事例や最新の防災技術を取り入れ、定期的に計画を見直すことも重要です。

診療データ保護対策

資産であるデータを守るために

紙カルテや院内サーバーに保存されたデータは災害時に失われるリスクがあります。そこで資産であるデータを守るために考えられるのがクラウドにデータを保存する方式です。2023年に改正された「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」では、災害時のデータ保全についても言及されており、クラウド利用の基準も明確化されています。

この方式なら極論をいえば、日本国土がなくならない限りデータは消失するということはありません。歯科医院内でデータが消失した場合でも、クラウドからデータを復元することができるので、被災から診療を一日でも早く再開し、地域の歯科診療を守るといった観点からも有効な手段です。

  

MICの「クラウドバックアップ」について

企業3,800社以上、国内会員86万人以上に採用実績を誇るAIデータ株式会社が提供する「AOSBOX Business Plus」と連携することで実現した、医療機関のデータを安全に保管するサービスです。浸水災害だけでなく、自然災害、ウイルス対策、ハードの故障、バックアップ漏れなど、どの歯科医院にも起こりうる様々な予期せぬトラブルからデータを守ります。

あらゆるトラブルに強く、高いセキュリティー力を保った医療ガイドライン(3省3ガイドライン)に準拠したサービスですので、安全にデータの運用管理が行えます。※

※医療にかかわる全ての行為は医療法等で医療機関等の管理者の責任が求められており、クラウドサービスにデータを保管する際の取り扱いについても同様です。そのため、本サービスの利用にあたってはシステム管理者を定め運用いただく必要があります。

まとめ

日本列島は様々な自然災害のリスクが重なる地域です。特に近年は気候変動の影響もあり、浸水災害や強風災害の激甚化が進んでいます。歯科医院においても、単一の災害だけでなく、複合的な災害リスクを前提とした対策が求められています。

建物や設備の物理的な対策、診療データの保護対策、そして人的な対策を組み合わせることで、災害に強い歯科医院づくりが可能になります。患者さんの大切な歯科情報と、安心して診療を受けられる環境を守るために、今一度、自院の災害対策を見直してみてはいかがでしょうか。

  

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