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歯科開業に必要な資金はいくら?独立前に知っておくべきお金の話

歯科開業に必要な資金はいくら?独立前に知っておくべきお金の話

開業を検討するうえで、やはり気になるのは資金にまつわる話ではないでしょうか。歯科医院は開業時に高額な医療機器への投資が必要で、さらに当面の運転資金を考慮すると他業種に比べて開業資金がかさむ傾向にあり、事前にしっかりと計画を練っておく必要があります。具体的にはどれくらいの資金を用意する必要があるのか、その具体的な用途や資金調達方法などをまとめました。

  

※歯科開業の全体像は「歯科開業に必要な情報を総まとめ!開業のメリット、資金調達、スケジュールから成功のコツまで」を併せてご覧ください。

歯科開業に必要な費用

歯科医院を開業する際に必要な資金は規模にも大きく左右されますが、一般的なユニット3台程度の診療所の場合で5,000万円以上といわれています。実際にはどのような費用がかかるのでしょうか。必要な費用を「医療機器・材料費」「賃貸契約・内装工事費用」「当面の運転資金」「広告費・求人費用など」の4つに分けて、具体的な用途と目安となる金額を見ていきましょう。

  

医療機器・材料費:2,000~3,500万円

開業資金のなかで最も大きな割合を占めるのは、やはり診療ユニットやレントゲンなどの医療機器です。導入する機種や内容によっても金額は大きく変わるほか、ユニットやレントゲンなどの大型機器は内装にも影響を及ぼします。ユニットを増やせば一度に多くの患者を診ることができますが、それだけスペースやスタッフの数が必要になります。バキュームシステムやエアーコンプレッサー、滅菌器などのほかの機器も含め、必要な台数を診療所の規模や予算に合わせてバランスよく算出することが重要です。具体的には以下のような用途が挙げられます。

【医療機器・材料費】

・歯科診療ユニット

・レントゲン設備

・バキュームシステム

・エアーコンプレッサー

・滅菌器

・レセコン

・歯科材料 など

  

賃貸契約・内外装工事費:2,000~3,000万円

賃貸契約金や内外装工事費なども大きな割合を占める項目です。ここではテナントから開業する想定で金額を算出していますが、建物を新築する場合や、同じテナントでも駅前や複合商業施設のような好条件の立地の場合はもう少し費用がかかる場合もあります。また、歯科医院は床上げが必要となるため、他業種の内装工事よりも費用が高くなることにも注意が必要です。具体的には以下のような項目が挙げられます。

【賃貸契約・内外装工事費】

・敷金(保証金)

・礼金

・前払い家賃

・仲介手数料

・内外装工事費

・家具

・看板

・火災保険

  

当面の運転資金:約1,200万円

診療所をオープンしてすぐに予約が埋まることはまずありません。また、保険診療の診療報酬は、レセプトのシステムの関係上、実際に入金があるまで2ヶ月ほどかかるため、それまではほぼ無収入になります。その間も人件費や家賃、光熱費、税理士の顧問料などの固定費は発生するため、それを想定して資金繰りを考えることが重要です。一般的には当面の運転資金として、経営が軌道に乗るまでの余裕も含めて6ヶ月程度の運転資金を用意しておくのがいいでしょう。具体的には以下のような項目が挙げられます。

【当面の運転資金】

・人件費

・家賃

・光熱費

・設備費

・税理士の顧問料

  

広告費・求人費など:150~400万円

上記の3項目と比べると金額は少ないものの、広告費や求人費もしっかりと想定しておきたい費用です。広告費としてはチラシやリーフレットのほか、ホームページ開設にかかる費用も含まれます。また、専門性の高いスタッフの求人を出す場合は、通常とは異なる専門媒体を利用した方が効率的な場合もあります。このほか、待合室のソファや下駄箱、トイレ用品、受付用品などの院内備品も必要な費用となります。

【広告費・求人費】

・広告費

・求人費

・院内備品

開業資金の調達方法

歯科医院の開業には5,000万円以上の資金が必要ですが、土地から建物を新築するような場合はさらに金額が増える場合もあります。ただ、すべてを自己資金で調達する必要はありません。一部を自分で用意し、残りは銀行からの融資や自治体からの補助金で賄うのが一般的です。

  

自己資金

歯科医院開業のための自己資金の目安は、1,000万円程度といわれています。なかには勤務医として働き、資金がたまってから開業するという方もいますが、金額が大きいためかなりの時間がかかり、時期を逃してしまうこともあります。自分の年齢や貯金額を踏まえ、現実的な額をためることがおすすめです。また、自己資金の割合が大きければそれだけ融資を受けやすくなるため、できれば多めに用意しておくのがベターです。

  

銀行からの融資

1,000万円程度を自己資金としてため、残りは日本政策金融公庫などの金融機関に融資を申請するのが一般的です。融資可能な金額はケースによって異なるため、具体的な開業時期が決まったら早めに金融機関に相談に行くのがいいでしょう。また、開業資金の大きな割合を占めるユニットやレントゲンなどの医療機器を、購入ではなくリースすることで金額を抑えるという選択肢もあります。

  

国や自治体の補助金

「医療施設等施設整備費補助金」や「臨床研修費等補助金」「働き方改革推進支援助成金」など、医療機関として申請が可能な補助金もあるため、条件が合えば利用を検討してみるのも選択肢のひとつです。ただ、書類申請から審査、決定までにはかなりの時間がかかることや、必ずしも審査が通るわけではないことに注意が必要です。また、審査に合格しても実際に支払われるのが先になるケースもあるため、あまりあてにしすぎるとトラブルにつながることもあります。確認してみて、運良く自分の条件に合うものがあれば申請してみる程度に考えておく方がいいでしょう。

医療機器は購入とリースのどちらがベター?

ユニットやレントゲンなどの医療機器は診療所に欠かせないものですが、高額なだけに購入ではなくリースを検討する人も多いのではないでしょうか。結論からいうと、購入とリースのどちらがいいかは「ケースバイケース」であり、どちらが正解ということはありません。

医療機器を購入した場合は、契約時点での金額で売買するため追加費用が発生しないというのが最大のメリットといえるでしょう。機器の所有権を持つことになるので会計上は「資産」として扱われ、固定資産税や保険の支払いが発生することにも注意が必要です。

また、医療機器は高額なため、通常は減価償却で資産を少しずつ経費計上するのが一般的です。機器の耐用年数で購入費用を分割するため節税効果が見込めますが、会計上の管理が煩雑になる点にも注意が必要です。

リースの最大のメリットは初期費用を抑えることができるため、開業資金に余裕を持たせることができる点にあります。また、固定資産税や保険についてはリース会社に任せることができ、事務手続きや経理が煩雑にならない点も大きなメリットといえるでしょう。一方で、リース期間満了時に追加費用が発生すること、売却や譲渡ができないことなどがデメリットになります。

いずれの場合にもメリット・デメリットがあるため、その機器の耐用期間を踏まえたうえで選択することが重要です。

開業資金準備のポイント

銀行からの融資は多めに借りておく

融資可能な金額や自己資金額にもよりますが、銀行からの融資は余裕を持って借りておくことをおすすめします。開業資金は、しっかりと計画していても予想外の出費が発生することもあります。また、前述のとおり診療報酬はレセプト請求する関係上、実際に入金があるのは2ヶ月後になります。そのため、一般的な業種に比べてプール金を多めに用意しておく必要があります。

開業後に資金が不足した場合、追加で融資を受けるには再審査が必要となり簡単ではありません。そのため、開業資金は少し多めに借りて、手元に現金を残しておくことをおすすめします。

  

10年後のリニューアルを念頭においておく

開業して10年たつと、リニューアルを検討する時期といわれています。開業当時から使い続けていた医療機器が古くなり修繕費がかさむほか、減価償却費の減少で税金負担が大きくなることなどが理由になります。また、10年もたつと地域の方々にとっても新鮮さがなくなり、新規の患者が次第に減ってくるケースもあるため、患者のニーズに合わせて柔軟に変化させていく事も重要です。

10年先のリニューアル費用を開業前から心配する必要はありませんが、医療機器を購入するかリースにするかということや、また資金繰りの計画などは、リニューアルがあることを前提として判断しておく必要があります。

一般業種より開業資金がかさむため、事前の事業計画をしっかりと

歯科医院の開業資金は単純に金額がかさむだけでなく、器材や材料など項目も複雑で多岐にわたるため、事前にしっかりと事業計画を立てておくことが重要です。

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