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開業してからが本番!歯科医院経営の安定化のために知っておきたいこと

開業してからが本番!歯科医院経営の安定化のために知っておきたいこと

開業しても必ず成功するとは限らないのが歯科医院の経営。診療所の運営やスタッフ教育、集患など、歯科医師として成功するために考えることは山ほどあります。今回は、歯科医院の経営安定化のために知っておきたい戦略的視点や、その指針となる考え方についてまとめました。

歯科医院経営のあるべき姿

厚生労働省がまとめた「医師・歯科医師・薬剤師統計」によると、2018年における人口10万当たりの歯科医師数はおよそ83.0人。2016年の前回調査と比べ0.6人増加していることが明らかになっています。この傾向はここ10年以上変わることなく、対人口比で見た歯科医師数は年々わずかながら増加しています。歯科医師数は毎年増えている一方、日本の総人口は2008年以降減少に転じていることを考えると、納得できる調査結果といえるでしょう。

また、2016年に厚生労働省が実施した「歯科疾患実態調査」では、80歳で20本以上歯を残す8020(ハチマル・ニイマル)達成者が50%を超えたという結果が出ています。このほか、小児1人当たりの平均虫歯数および虫歯有病者率が年々減少しているといったように、口腔衛生状況は以前に比べて大きく改善していることがうかがえます。

こうした状況のなか、歯科医師として新規開業し安定した経営を続けていくためには、ただ漫然と運営を続けていくだけでは難しいといえるでしょう。歯科診療所の治療といえばう蝕処置や抜歯、補綴(ほてつ)治療などがイメージされますが、それだけではほかの診療所との差別化ができず、将来的に患者を集めることが難しくなるかもしれません。長期的に安定して経営を続けていくためには、まず自身の理想とする診療所像をしっかりと思い描き、それを実現し利益をあげるための戦略的な思考と、継続的な改善が求められます。

歯科医院の経営に求められる戦略的思考には、以下のようなものがあります。

  

(1) 将来的にどのような歯科医院でありたいかをイメージする

自分が理想とする診療所をイメージし、それを実現するために必要な売上規模や利益、拠点数、診療体制などを具体的に書き出していきます。

  

(2) 現在の診療所と将来の理想像のギャップを把握する

将来的に実現したい診療所と現状とのギャップを把握し、それを埋めるための課題を見つけ出します。ただ「売上を上げる」といったような漠然とした課題ではなく「来院数◯人以上」「自費診療の割合を◯%に」などのように具体的な数値を目標にします。

  

(3) 達成するべき目標を事業計画書に落とし込む

目標を事業計画書に落とし込み、それを達成できるように売上計画や設備投資を行っていきます。

厚生労働省の指針

歯科医院の経営の安定化のためには、理想とする診療所をイメージし、そこに向かって戦略的に成長を続けることが重要です。その「理想の診療所」とは、いったいどのようなものなのでしょうか。 その答えは医師の考え方によっても変わるため、絶対的な正解があるわけではありません。ただ、厚生労働省が打ち出している指針を参考にするのもひとつの考え方です。

先に紹介した厚生労働省の「歯科疾患実態調査」の結果にあるとおり、近年はう蝕の減少に見られるように口腔衛生状況は大きく改善されてきました。しかしその一方で、高齢化が進行し疾病構造が変化したことで、歯科医療に対するニーズも変化していることが報告されています。1980年代まではう蝕処置や補綴治療など、歯の形態回復を主体とした歯科治療が中心でしたが、近年は患者のライフステージや身体の状況に応じ、医科とも連携した総合的な歯科保健医療サービスが求められているのです。

こうしたニーズの変化を受け、すでに政府は口腔の健康と全身の健康を関連付けた数々の医療施策を打ち出しています。なかでも注目するべきは2018年に行われた診療報酬改定で、「平成30年度診療報酬改定の概要」によると、その目的について「質が高く効率的な医療提供体制の整備とともに、新しいニーズにも対応できる質の高い医療の実現を目指す」ことが明記されています。また具体的な項目としては、以下のような点が挙げられています。

1.かかりつけ歯科医師の機能の評価
2.周術期等の口腔機能管理の推進
3.質の高い在宅医療の確保
4.口腔疾患の重症化予防、口腔機能低下への対応、生活の質に配慮した歯科医療の推進
出典:平成30年度診療報酬改定の概要 | 厚生労働省

診療所の運営方針を計画するうえでは、こうした政府の方針を参考にするのもひとつの考え方です。国策にのっとった治療は加点傾向にあることもあり、患者一人ひとりの状態に応じた口腔機能の維持・回復を目指す「治療・管理・連携型」の治療サービスの提供は、保険収入を増やし歯科医院の経営の安定化にもつながるものなのです。

歯科医院の経営安定化に必要な視点

歯科医院を長期にわたって経営していくためには、収益の確保だけでなくさまざまな施策が必要です。経営安定化のために必要な視点について考えてみましょう。

  

(1)診療サービス提供の視点

まず医療機関として患者に安定した診療サービスを提供することが重要です。医療技術の向上やトレンドを取り入れた医療の提供はもちろんですが、自費診療の割合を増やしたり、原価を低減させる工夫をしたりするなど、コスト感覚を持った診療を行うのも重要な視点といえます。

  

(2)人事的な視点

長期にわたって安定した経営を続けるためには、勤務医やスタッフが定着しやすい環境を整えることが重要です。スタッフ教育によるスキル向上や労働条件の見直しによるモチベーション向上のほか、診療所の規模に合わせた適正人数の確保、給与の適正化などが必要となります。

  

(3)プロモーションの視点

患者数を増やし定着させるためには、マーケティングやプロモーションの視点も重要となります。診療所の内外装を親しみのある来院しやすいものにする、ホームページやチラシなど広告に力を入れるといった施策のほか、スタッフの接遇研修によるコミュニケーション力の向上や、自費診療の価格設定の見直しなどを行います。

  

(4)財務的な視点

経営の安定化のためには財務的な視点も必要です。資金繰りや利益の把握はもちろん、経営計画書、事業計画書を作成しそれにのっとった経営を行うことが重要です。最新の医療技術提供にともなう設備や材料への投資、また医療機器の入れ替えなど将来的に必要なコストも踏まえる必要があります。

歯科経営におけるPDCAサイクル

理想とする歯科医院を実現するためには、経営計画書、事業計画書を作成し、それにのっとって安定した経営を続けていくことが重要ですが、必ずしも計画どおりうまくいくとは限りません。長期にわたって経営を続けていくなかで、目標としていた利益額を達成できなかったり、自費診療の割合が下がってしまったり、患者が一時的に減ったりすることもあるかもしれません。こうした状況に対応していくためには、PDCAサイクルを用いた定期的な経営改善が必要です。

PDCAサイクルとは業務において目標を達成するためのフレームワークで、以下の4つの頭文字をつなげた言葉です。
・Plan(計画):歯科医療に対するニーズや自分の理想とする診療所像を踏まえ、事業計画や経営計画を作成する。
・Do(実行):作成した計画にのっとって診療業務を行う。
・Check(評価):集患状況や利益、診療所の運営状況などが計画に沿っているか評価する。
・Action(改善):計画どおりに進んでいない箇所を調べ、改善を繰り返す。

経営を安定化させ、理想の診療所を実現するためには、ただ経営計画書や事業計画書を作成するだけでは不十分で、集患状況や利益、診療所の運営状況などを定期的にチェックし、計画に沿って進んでいるかを評価することが重要です。計画から改善まで各ステップを1周したら、次は改善点をもとにした新たな計画を立て、目標を確実に達成できるようサイクルを回していきます。

歯科医師として開業する際に経営計画書や事業計画書を作成し、それに沿って業務を行うため、「Plan(計画)」「Do(実行)」はほとんどの方が実行しているといえるでしょう。そこに「Check(評価)」と「Action(改善)」のステップを加えて習慣化することで、目標に向かって確実に歩みを進めることができるのです。

将来に向かって確実に歩みを進める

開業してからが本番ともいえる歯科医院の経営。自分の理想像をしっかりとイメージし、将来的な目標に向かって確実に歩みを進めることが成功のポイントといえます。

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