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歯科医院で使える補助金・助成金の概要まとめ【設備投資や人材確保・育成を充実させる方法】

歯科医院で使える補助金・助成金の概要まとめ【設備投資や人材確保・育成を充実させる方法】

歯科医院を健全に経営していくためには、IT投資や設備投資、人材確保、育成、福利厚生の整備など、多岐にわたる取り組みを行っていく必要があります。この記事では、こうした取り組みを行っていくうえで利用できる、補助金や助成金についてまとめてご紹介します。

健全経営のためには補助金・助成金の活用も選択肢に

実際に歯科医院を経営していくうえでは、歯科医師としての技術だけでなく、集患や院内のマネジメント、特に歯科衛生士をはじめとする院内スタッフの人材確保、育成、福利厚生の整備など、経営者としての手腕が問われる場面も決して少なくありません。どんなに治療技術があっても、スタッフの確保や育成がおぼつかなければ、結果として患者さんに十分な治療を提供することはできず、評判を落としてしまう可能性もあります。こうした状況では、健全に歯科医院を経営することが難しくなってしまうでしょう。

歯科医院を経営していくためには、治療に係る技術をはじめ、IT投資や設備投資、人材確保、育成、福利厚生の整備などの多方面での取り組みを行いながら、組織を健全に運営していく視点が欠かせないのはご承知の通りです。 2018年7月6日には「働き方改革関連法」(「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成30年法律第71号)」)が公布され、順次施行されています。これは労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現することを目的としており、長時間労働の是正や、雇用形態にかかわらない公正な待遇を確保するための措置などが盛り込まれています。

そして、2024年4月からは「医師の働き方改革」が施行されます。これは「勤務医の時間外・休日労働の年間上限は原則960時間とする」「連続勤務時間制限、長時間勤務医師の面接指導などで、勤務医の健康確保を目指す」などの取り決めを通して、医療従事者の働き方の適正化を目指したものです。

歯科医院の経営においては、治療の質を維持することはもちろん、歯科医師や歯科衛生士などのスタッフの働き方を適正化する取り組みの両立が求められる時代です。そのためにはIT投資や設備投資、人材育成などに継続的に取り組み、歯科医師や歯科衛生士が健康に働き続けることができる環境を整備していくことが重要です。

こうした視点を踏まえると、補助金・助成金制度はぜひ押さえておきたいポイントです。歯科で使える補助金や助成金をしっかり把握・活用して、院内の労働環境の整備に努めていくことが、歯科医院の健全な経営につながるといえるでしょう。

補助金と助成金の違い

国や地方公共団体から受け取ることのできるお金には「補助金」と「助成金」の2つがあり、具体的には、以下のような違いがあります。

  

補助金とは

補助金とは、経済産業省や地方自治体が販路開拓や新製品開発、生産性向上など産業の振興を目的として実施するものを指し、代表的なものには「ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)」や「IT導入補助金」などが挙げられます。

補助金が助成金と大きく異なる点は、採択審査があることです。補助金は政策を推進するうえで良い提案に対して出されるもので、審査の際には、要件を満たしているかはもちろん、提案の中身も審査されます。基本的には申請者が全員採択されることはなく、数倍から数十倍の倍率となることも珍しくありません。また、公募期間も募集開始から締め切りまでが数週間程度と短い傾向にあることも注意が必要です。

  

助成金とは

助成金とは、主に厚生労働省や地方公共団体が、雇用や人材育成など雇用の増加や安定化、労働者の能力開発などを目的として実施するもので、代表的なものとしては「雇用調整助成金」や「キャリアアップ助成金」などがあげられます。

助成金も補助金と同じように審査がありますが、助成金は基本的には給付要件を満たしているかの審査であり、要件を満たしていれば原則もらえるという点が大きく異なります。助成金を活用することで、従業員の雇用を維持したり、労働環境を整備したりするなど、スタッフが働きやすい環境を整備することが可能となります。

歯科で使える代表的な補助金

IT導入補助金2024(2024年3月時点)

IT導入補助金は、ITツールやソフトウェアを導入する際に申請ができる補助金です。歯科医院においては、レセコンをはじめとするソフトウェアなどの導入に活用することができます。次に紹介する「ものづくり補助金」よりも対象範囲が広く、個人開業医だけでなく、医療法人や社会福祉法人なども対象となります。

  

IT導入補助金の詳細、並びに当該補助金を活用したレセコンの導入をご検討でしたら、こちらも併せてご覧ください。

  

ものづくり補助金(2023年4月時点)

ものづくり補助金は、生産性向上を目的とした中小企業の設備投資を支援する補助金です。口腔内スキャンのCT装置やCAD/CAM冠を作る3Dプリンターの導入に活用できることもあり、近年は歯科でも人気の高い補助金でしたが、第13次公募以降は医療法人、社会福祉法人は補助対象外となりました。そのため、ものづくり補助金を申請できるのは、法人でない個人事業、つまり補助事業で取り組む内容が自由診療に限られることに注意する必要があります。具体的な補助金額上限や補助率は以下のとおりです。

  

応募枠:デジタル枠

申請要件
1.DXに資する革新的な製品・サービスの開発であること
2.デジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善であること

従業員規模:5人以下
補助上限金額:750万円以内
補助率:2/3以内

従業員規模:6~20人
補助上限金額:1,000万円以内
補助率:2/3以内

従業員規模:21人以上
補助上限金額:1,250万円以内
補助率:2/3以内

歯科で使える代表的な助成金

働き方改革推進支援助成金(2023年4月時点)

働き方改革推進支援助成金は、働き方改革の実現に必要な環境整備にかかる費用の一部を助成する制度です。中小企業事業主を対象にしており、企業規模による労働環境の格差を是正することを目的としています。ここでは2023年の例として、一般的な歯科医院に関わりのある「労働時間短縮・年休促進支援コース」「勤務時間インターバル導入コース」「労働時間適正管理推進コース」の3つをご紹介します。

  

コース:労働時間短縮・年休促進支援コース

・目的:時間外労働の削減や年次有給休暇、特別休暇の促進に向けた環境整備に取り組む中小企業事業主を支援するコース
・支給額:以下のいずれか低い方の額
(1)支給対象となる取り組みの成果目標の上限額および賃金加算額の合計額
(2)対象経費の合計額×補助率3/4(※または取り組みにより4/5)

  

コース:勤務時間インターバル導入コース

・目的:勤務間インターバル制度(勤務がいったん終了したあと、次の勤務までに一定時間以上の休息時間を設ける制度)の導入に取り組む中小企業事業主を支援するコース
・支給額:取り組みの対象経費に対して補助率3/4を乗じた額を助成(休息時間数や取組内容に応じて上限があります)

  

コース:労働時間適正管理推進コース

・目的:労務・労働時間の適正管理の推進に向けた環境整備に取り組む中小企業事業主を支援するコース
・支給額:対象経費の合計額に補助率3/4を乗じた額を助成(ただし上限100万円)
・支給対象となる取り組み(3コース共通、いずれか1つ以上):
 1 労務管理担当者に対する研修
 2 労働者に対する研修、周知・啓発
 3 外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など)によるコンサルティング
 4 就業規則・労使協定等の作成・変更
 5 人材確保に向けた取り組み
 6 労務管理用ソフトウェアの導入・更新
 7 労務管理用機器の導入・更新
 8 デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
 9 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新
 (小売業のPOS装置、自動車修理業の自動車リフト、運送業の洗車機など)
 ※研修には、勤務間インターバル制度に関するもの及び業務研修も含みます。
 ※原則としてパソコン、タブレット、スマートフォンは対象となりません。

  

両立支援等助成金(2023年4月時点)

両立支援等助成金は、育児や介護との両立を支援するための助成金です。この助成金を活用することで、スタッフが育児休業や介護休業を取得した場合の代替要員のコストを補填してもらうことができます。ここでは「育児休業等支援コース」「介護離職防止支援コース」の2つをご紹介します。

  

コース:育児休業等支援コース

要件

「育休復帰支援プラン」を策定したうえで、プランに基づいて労働者の円滑な介護休業の取得・復帰に取り組み、育児休業を取得した労働者がいること

  

支給額

・育児休業取得時:30万円(1事業主2人まで)
・職場復帰時:30万円(1事業主2人まで)
・業務代替支援:新規雇用時50万円、手当支給等10万円(1事業主当たり1年度10人まで)
・職場復帰後支援:制度導入時30万円(AまたはBの制度導入時いずれか1回のみ)
   A:子の看護休暇制度利用時 1,000円×時間
   B:保育サービス費用補助制度利用時 実費の2/3

  

コース:介護離職防止支援コース

要件

「介護支援プラン」を策定したうえで、プランに基づいて労働者の円滑な介護休業の取得・復帰に取り組み、介護休業を取得した労働者がいること

  

支給額

・介護休業取得時:30万円(1事業主1年度5人まで)
・職場復帰時:30万円(1事業主1年度5人まで)
・介護両立支援制度:30万円(1事業主1年度5人まで)

  

歯科衛生士をはじめとするスタッフに長く働いてもらうためには、まず働きやすい環境を整備することが重要です。そうすることで人材の確保・育成につながり、ひいては歯科医院の安定した経営・運営を実現することにもなります。

特に育児や介護などで休暇を取るスタッフが復職する際に気になるのは勤務時間(特に残業の有無や休みの取りやすさなど)であることが多く、ここで紹介した助成金を活用することが、働きやすい環境を整備することにもつながります。

まとめ:設備投資や人材確保・育成のために、補助金や助成金の活用を

補助金や助成金にはさまざまなものがあり、歯科で活用できるものも数多くあります。先にもご紹介したように、歯科医院を健全に経営していくためには、設備投資や人材確保・育成など、さまざまな取り組みを並行して行っていくことが重要です。こうした取り組みをすでに始めている方はもちろん、これから対応を検討する場合でも、補助金、助成金の活用を視野に入れてみてはいかがでしょうか。

  

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