【歯科医院向け】スマホでマイナ保険証、2025年9月開始|必要な設備と受付対応
2025年9月19日から、マイナンバーカードの機能をスマートフォンで利用できるサービスが医療機関で順次開始されました。患者さんの利便性は向上する一方で、医療機関側には新たな設備投資や受付オペレーションの見直しが求められています。
このような状況の中、多くの歯科医院が導入を検討していますが、「どのような設備が必要なのか」「受付の手順はどう変わるのか」といった具体的な準備方法がわからず、対応に踏み切れない医院も少なくありません。
本記事では、スマートフォンでのマイナ保険証利用に必要な設備や補助金制度、受付での具体的な対応手順、患者さんへの案内方法について解説します。
スマートフォンでのマイナ保険証利用とは?基本的な仕組み
マイナンバーカードをスマートフォンに取り込むことで、カードを持ち歩かずに受診できるようになります。まずはその仕組みと、従来のカード型との違いを整理しておきましょう。
マイナンバーカード機能のスマホ搭載サービス
マイナ保険証のスマートフォン対応は、マイナンバーカードの電子証明書機能をスマートフォンに搭載し、カードを持ち歩かなくても医療機関で保険証として利用できるサービスです。デジタル庁が提供する「Androidスマホ用電子証明書搭載サービス」と「iPhoneのマイナンバーカード」の2つがあります。
患者さんは事前にマイナポータルアプリから健康保険証の利用登録を行い、スマートフォンにマイナンバーカードの電子証明書を追加することで利用できるようになります。この設定を完了すれば、実物のマイナンバーカードを持参しなくても、スマートフォンだけで医療機関を受診できます。
なお、スマートフォンに電子証明書を追加した後も、実物のマイナンバーカードは引き続き保険証として利用可能です。患者さんは状況に応じてカード型とスマートフォンでの利用を使い分けることができます。
スマートフォンでの受付の流れ
スマートフォンでマイナ保険証を利用する場合、患者さんは顔認証付きカードリーダーで操作を開始し、その後、汎用カードリーダーにスマートフォンをかざすことで受付が完了します。カードを取り出す必要がないため、患者さんにとってスムーズな受付が可能です。 本人認証は患者さんご自身のスマートフォンで行います。Androidの場合は暗証番号入力、iPhoneの場合は生体認証(Face IDまたはTouch ID)を使用するため、セキュリティを保ちながら簡単に認証できます。
スマートフォン対応に必要な設備と準備
導入には、新しい機器の追加や既存システムの更新が必要な場合があります。ここでは、歯科医院が準備すべき機材と注意点をまとめます。
必要な機器
マイナ保険証のスマートフォン対応に必要な機器は以下の通りです。
・顔認証付きカードリーダー(既存の機器)
既に導入済みの顔認証付きカードリーダーは、スマートフォンでの利用時も引き続き使用します。患者さんが「スマホ利用」を選択する操作や、医療情報提供の同意入力はこの機器で行います。機種によっては、最新のアプリケーションへの更新が必要な場合があります。
・汎用カードリーダー
スマートフォンでのマイナ保険証利用には、汎用カードリーダーが必要です。この機器は、患者さんのスマートフォンから電子証明書の情報を読み取り、資格確認を行う役割を担います。
なお、一部の顔認証付きカードリーダーには、スマートフォンの読み取り機能が搭載されている機種もあります。ご利用中の顔認証付きカードリーダーにスマホ読み取り機能が搭載されているかは、医療機関等向け総合ポータルサイトで確認してください。
参考:医療機関等向け総合ポータルサイト:マイナ保険証スマホ対応補助事業について
汎用カードリーダーの導入
汎用カードリーダーの導入が必要な場合、以下のポイントを確認して準備を進めましょう。
・推奨機種と選び方
非接触型のICカードリーダーで、厚生労働省の推奨モデルとして認定されている機種を選ぶと安心です。使用しているオンライン資格確認システムとの互換性を事前に確認することが重要です。
・設置場所と接続方法
受付カウンターの患者さんが操作しやすい位置に設置します。かざす場所がわかるように案内シールを貼付しておくとスムーズです。USB接続タイプが主流で、顔認証付きカードリーダーが接続されているパソコンに外付け接続します。
補助金制度の活用
厚生労働省は、スマートフォンでのマイナ保険証利用を促進するため、医療機関向けの補助金制度を2025年8月下旬より実施しています。
スマートフォン対応の汎用カードリーダーおよび必要に応じた対象機材を、ポータルサイトで取得したクーポンコードを使用して、
Amazonビジネスの専用購入ページから購入した医療機関が補助対象です。
補助額や申請期限については厚生労働省の公式サイトで最新情報を確認してください。早めに導入を進めることで、補助金を活用しながら患者さんの利便性向上と医院の利用率向上を図ることができます。
参考:厚生労働省:マイナ保険証の利用促進等について
医療機関等向け総合ポータルサイト:マイナ保険証スマホ対応補助事業について
患者さんへの事前案内と医院での準備
スマートフォンでのマイナ保険証利用をスムーズに運用するには、医院側の準備と患者さんへの事前案内が重要です。ここでは、医院で整えるべき体制と、効果的な案内方法について解説します。
歯科医院で気をつけたいポイント
スマートフォンによるマイナ保険証の利用が広がる中で、歯科医院として押さえておきたいポイントを整理しておきましょう。
・カードリーダーの位置をわかりやすくする
汎用カードリーダーの近くに案内ステッカーなどを貼り、患者さんが迷わず操作できるようにしておくと安心です。
・初めて利用する患者さんをサポートできる体制を整える
操作に戸惑う方も多いため、スタッフがサポートできるようにしておくとスムーズな受付につながります。
・トラブル時の対応を周知しておく
マイナンバーカード本体を使って受付できることをあらかじめ伝えておくと混乱を防げます。
これらの準備を整えることで、患者さんがスムーズにスマートフォンでの受付を利用でき、待ち時間の短縮や受付業務の効率化につながります。
院内での案内方法
患者さんへの案内は、複数の方法を組み合わせて行うことが効果的です。
・対応ステッカーと広報物の掲示
厚生労働省から配布される対応ステッカーを受付窓口に掲示します。このステッカーがあることで、患者さんは「この医院ではスマートフォンでマイナ保険証が使える」と一目で理解できます。また、厚生労働省ではマイナ保険証に関する各種広報物(ポスター、リーフレット等)も提供していますので、待合室や受付カウンターに設置することで、患者さんへの理解促進に役立ちます。
・予約確認時の案内
予約確認の電話をする際に、「当院ではスマートフォンでのマイナ保険証利用にも対応しております。ご利用の際は事前に設定をお済ませください。」と一言添えるだけでも効果があります。
・院内POPと案内チラシ
院内にPOPや案内チラシを設置することも有効です。待合室や受付カウンターに「スマホ保険証の使い方」を簡単に説明した資料を置いておくことで、患者さん自身で情報を確認できます。また、マイナポータルのQRコードを掲載しておくと、その場で設定方法を調べることもできます。
・Webサイト・SNSでの告知
公式サイトやSNSでの告知も効果的です。「9月からスマートフォンでのマイナ保険証利用に対応しました。」という投稿をすることで、来院前に患者さんに情報を届けることができます。
患者さんの準備事項
スマートフォンでマイナ保険証を利用するには、患者さん側で事前の利用登録が必要です。来院前に以下の準備をしてもらうよう案内しましょう。
・準備するもの
・実物のマイナンバーカード
・最新版のマイナポータルアプリのインストール
・券面入力用暗証番号の確認(数字4桁)※iPhoneのみ
・署名用パスワードの確認(英数字6〜16文字)
・登録手順
上記4つを準備した上で、以下の登録を行ってもらいます。
<ステップ1:健康保険証の利用登録>
まだマイナ保険証を利用したことがない方は、マイナポータルから健康保険証の利用登録を行う必要があります。既に登録済みの方はこのステップは不要です。
<ステップ2:スマートフォンへの電子証明書追加>
マイナポータルアプリから、スマートフォンにマイナンバーカードの電子証明書を追加します。この設定が完了すると、スマートフォンでマイナ保険証として利用できるようになります。
対応機種の確認
マイナ保険証をスマートフォンで利用する際の対応機種や必要なOSバージョンについては、デジタル庁およびマイナポータルの公式サイトで最新情報をご確認いただけます。
参考:デジタル庁:スマートフォンのマイナンバーカード
マイナポータル:質問/マイナポータルアプリに対応しているスマートフォン等を教えてください。
まとめ
スマートフォンで利用できるマイナ保険証は、患者さんの利便性を大きく高めるだけでなく、歯科医院にとっても医療DXの推進や受付業務の効率化につながる新しい仕組みです。2025年9月から本格的に運用が始まった今、対応の早さが医院の信頼性や患者満足度を左右する時期にきています。
導入には、汎用カードリーダーの設置やシステムの更新といった設備面の準備に加え、スタッフ教育や患者さんへの案内体制の整備も欠かせません。初めて利用する患者さんがスムーズに受付できるよう、院内での導線や説明資料を整えておくことで、混乱や待ち時間の発生を防ぐことができます。補助金制度を上手に活用しながら、段階的に導入を進めることで、負担を抑えつつスムーズな対応が可能になります。
スマートフォンでのマイナ保険証利用への対応は、単なる制度対応ではなく、患者さんにとって安心で快適な医療を提供するための取り組みでもあります。早めの準備と丁寧な案内体制を整えることで、医院の信頼性を高め、今後の医療DX時代に対応した歯科経営を実現していきましょう。
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│投稿者│株式会社ミック デジタルマーケティングチーム
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