Newsニュース

歯科医院のクレーム対応、早期解決のために必要なポイント

歯科医院のクレーム対応、早期解決のために必要なポイント

患者さんからのクレームはできる限り避けたいもの。クレームは受付業務や会計業務に支障が出るだけでなく、対応を誤るとよくない噂や紛争につながり、歯科医院の経営にも大きな影響を与える可能性があります。こうしたトラブルを速やかに解決するためには、初期対応が重要です。この記事では、患者さんからのクレーム対応のポイントについて紹介します。

  

歯科医院でよくあるクレームと対応方法

歯科医院で起こるクレームには、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。まずはよく聞かれるクレームの例と、その対処方法について見ていきましょう。

  

ケース1:予約しているのに待ち時間が長い

歯科医院は基本的に予約制ですが、前の患者さんの治療が長引けば、次の患者さんを待たせてしまうこともあります。こうした場合、次の患者さんは予約しているはずなのに時間通りに診療してもらえず、待たされてしまったとして不満に感じる場合があります。

対処方法:人の体のことなので、予定外に時間がかかってしまうこともあります。そのため、この場合は前の治療が長引いていることを丁寧に説明し、理解してもらうしかありません。できれば患者さんから指摘される前に、こちらから声がけして待たせてしまうことを伝えたほうがいいでしょう。また、何度も待たせてしまうことのないよう、次回以降は空いている時間帯をご案内したり、時間がかかりそうな患者さんの後には予約を入れないようにしたりするなどの配慮が必要です。

  

ケース2:いつまで経っても治療が終わらない

歯科治療は何度も通院して治療にあたるのが一般的で、なかには長期間かかるケースもあります。ただ、患者さんにとっては治療が進んでいることを実感しにくい場合もあり「いつまで経っても治療が終わらない」「治療を引き伸ばして金儲けをしているのではないか」と不満を持たれてしまうことがあります。

対処方法:初診の際に、どういった治療を行うのか、どのくらいの期間がかかるのかをあらかじめ説明するようにしましょう。なかには説明を受けても忘れてしまう患者さんもいます。そのため、不安を感じた場合は診療のたびに簡単に説明するようにすると患者さんも安心して治療に向かえるでしょう。

  

ケース3:治療内容に関する「言った」「言わない」のトラブル

歯科医院では症状に合わせてベストな治療を提供するのが通常ですが、必ずしもそれが患者さんの希望と合致しないこともあります。例えば、咬合支持の必要性があるのに、患者さんが治療部位の歯だけの治療を強く希望するといったケースです。この場合、患者さんの希望通りに治療を行った結果歯が欠けてしまっても、患者さんからすれば治療が不十分だったという印象になり、咬合支持の必要性について十分に説明していても「言った」「言わない」のトラブルにつながる可能性があります。

対処方法:この場合も「ケース2」と同じように、初診の際にどういった治療を行うのか、なぜその治療が必要なのかを丁寧に説明することが重要です。抜歯など不可逆的な治療を行う場合、また例のようにやむを得ず患者さんの希望を優先して治療を行う場合は、あらかじめ治療同意書を求めるのも対処方法のひとつです。

  

ケース4:インプラント治療後のクレーム

近年はインプラント治療のリスクや術後のトラブルがマスコミに取り上げられることが多く、インプラント治療後のクレームが増えています。マスコミの報道は得てして危険性の高さや、説明不足、儲け主義といったネガティブな側面だけを取り上げることが多く、それを見た患者さんが「自分のケースも治療ミスだったのではないか」と不安に感じてクレームに発展するケースがあります。

対処方法:インプラント治療に関しては訴訟に発展するケースも多く、慰謝料の請求額も数百万~数千万と高額化しがちです。こうしたケースではスタッフや院長先生が直接対応するのではなく、弁護士など法律の専門家に相談することをおすすめします。患者さんと直接交渉してしまうと、ミスを補う保険が支払われなかったり、万一訴訟に発展した際にミスを認めた証拠として扱われたりする場合があります。

  

クレームはなぜ起こる?

患者さんのクレームは、なぜ起こるのでしょうか?

私たちが金銭を支払ってサービスを受ける場合、そこには少なからず「期待」が生まれます。例えばレストランなら「どんなものを食べさせてくれるのだろう」という期待、ホテルなら「どれだけ心地良い空間を提供してくれるのだろう」といった期待です。当然ながらこうした「期待」は医療機関に対してもあり、患者さんが感じる期待の度合いは、一般的に他業種に比べて大きいといえるでしょう。

しかし、医療機関だからといって常に100%患者さんの期待に応えられるわけではありません。医学的見地から見て患者さんの希望通りではない治療のほうがベターな場合や、他の患者さんとの兼ね合いで希望に応えられない場合、また診療所を運営するうえでどうしても応えられない依頼など、患者さんに我慢をお願いしないといけない場面は多々あります。こうした場合、患者さんが期待していたサービスや対応と、実際のサービスや対応にギャップが生まれ、不満を感じたりクレームに発展したりするのです。

ただ、クレームは歯科医院にとって必ずしも困ったものではなく、患者さんが求めていることや不満に思ったことを、言語化して伝えてくれるものでもあります。こうした声に注意深く耳を傾けてみると、実は歯科医院の接遇や運営などの改善につながるケースも少なくないのです。そのため、患者さんからのクレームは改善点を見つける貴重な場として、誠意を持って対応することが重要といえるでしょう。

  

●関連コラム:歯科医院における接遇の重要性と、向上のためにできること

  

こんな対応はNG!クレーム対応で気をつけたいこと

患者さんのクレームに対応する場合は「やってはいけないこと」が3つあります。

・患者さんの話をさえぎったり、言葉をかぶせたりしない
・顔をしかめたり、迷惑そうな態度を取ったりしない
・医院の常識や通例を押し付けたり、一方的に話を突っぱねたりしない

これらは文字に起こすといずれも当たり前のことのように思えますが、実際は患者さんと話をするなかで、ついこうした対応をとってしまうケースは少なくありません。しかし、患者さんのクレームは歯科医院の接遇や運営の改善点を見つける貴重な場でもあり、まずは真摯な態度で耳を傾けることが大切です。

このポイントをおろそかにして、一方的にこちらの言い分を主張したり、話を突っぱねたりすると、患者さんは誠意のある対応をされていないと感じてしまうでしょう。場合によっては、さらなるクレームに発展する可能性もあります。後々の大きなトラブルを避けるためにも、患者さんのクレームに対してはまず傾聴する姿勢が重要なのです。

  

クレーム対策のためにすべきこと

患者さんにもさまざまな人がいるため、クレームはどう気をつけていても一定数起こってしまうものです。ただ、仕方ないと諦めるのではなく、起こってしまった際にどのように対処するかで、その後大きなトラブルに発展するかどうかが変わります。クレームの初期対応を誤らないために、以下のような点に取り組んでおくことをおすすめします。

  

ロールプレイングを院内で実施し、状況に慣れておく

クレーム対応に慣れていないスタッフの場合、患者さんが大きな声を出したり怒ったりしていることに萎縮して、正しい対応ができなくなってしまうことがあります。こうした状況でも落ち着いて対応していくためには、スタッフ同士でロールプレイングを実施し、状況に慣れておくことが大切です。

  

クレーム対応マニュアルを作成する

クレームの初期対応を誤らないためには、対応マニュアルを作成しスタッフ間で共有しておくのも効果的です。想定されるクレームの内容や、クレームが発生した場合に医院としてどのように対応するか、また周囲がどのようにフォローに入るかなどを明確にしておきましょう。

  

クレームの記録をとり、院内共有する

過去に起きたクレームの記録をとり、院内で共有しておくのも有効な対応方法です。レセコンのなかには、患者さんの情報を記録することができる機能を持っているものもあります。通常は、治療履歴や既往歴、また個人情報などを管理するための機能ですが、クレームがあった場合はその内容を記載しておき、次回以降の対応の参考にする使い方もあります。こうしたレセコンの機能を活用することで、容易にクレームの記録や院内の情報共有を行うことができます。

  

●関連コラム:患者さんと自然な会話が弾むコミュニケーションの基礎を作る!

  

クレーマーへの対策

クレームは医院に対する患者さんの不満や要望を把握する場ではありますが、なかには医院に落ち度がないにもかかわらず、悪意を持ってクレームをつける患者さんもいます。こうした場合、どこまで対応するか、またどこまでの要望を受けるかを医院として決めておくことが大切です。あまりに対応が難しい場合、また理不尽な要求をされる場合には、弁護士など法律の専門家に対応を任せることも検討しておきましょう。

  

まとめ:クレームは医院改善のための場ととらえる

患者さんからのクレームは厄介なものと考えられがちですが、多くの場合、その歯科医院が抱えている課題を明らかにし、改善のきっかけにつなげることができる貴重な場でもあります。クレームをただ収めることに注力するのではなく、患者さんのニーズをしっかりと把握し、改善につなげていくことが歯科医院にとってもプラスとなるでしょう。

弊社では、電話での患者さん対応のポイントをまとめたお役立ち資料『今日から使える!歯科接遇・電話応対ノウハウ』を作成しました。患者さんのニーズをしっかりととらえ、増患につなげるためにぜひ、ご活用ください。

  

今日から使える!歯科接遇・電話応対ノウハウ

Reference関連情報