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歯科医院の物価高対策 人件費と材料費高騰にどう対応するか

歯科医院の物価高対策 人件費と材料費高騰にどう対応するか


「昨今の物価高騰により、金や銀を含む材料費や光熱費、人件費の上昇が続き、経営環境は厳しさを増しています。こうした影響は幅広い業界に及んでおり、医療機関も例外ではありません。

しかし、保険診療が中心の歯科医院では、コスト増をそのまま価格に反映することができません。支出は増える一方で、収入は大きく変えられない。このバランスの取りづらさが、日々の経営判断を難しくしています。

本記事では、物価高が歯科医院経営に与える影響を整理したうえで、活用できる支援制度や診療報酬のポイント、さらに現場で取り組める経営対策について解説します。

物価高の影響と歯科医院経営の構造

物価上昇の影響を含め、歯科医院の経営には複数の要因が重なっています。コスト増の要因と、歯科特有の「収入が増やしにくい」構造を合わせて整理しておきましょう。

  

人件費の上昇と採用難

近年の最低賃金の引き上げにより、スタッフの賃上げ対応が経営上の負担になっています。さらに、歯科衛生士・歯科技工士などの専門職は慢性的な人材不足が続いており、採用競争の激化によって給与水準はより上がりやすい状況です。

人件費は一度上げると下げることが難しく、固定費として毎月の経営に影響し続けます。たとえばスタッフを1名増員するだけでも、年間では数百万円単位のコスト増につながることもあり、来院数や診療単価が変わらなければ、その分だけ利益は圧迫されます。

しかし、人手不足のままでは診療体制を維持することが難しくなるため、人員を増やすべきかどうかの判断に悩む場面も増えています。こうした状況は、特に規模の小さな医院ほど影響が大きくなりやすい傾向があります。

●あわせて読みたいコラム:「歯科衛生士不足が続く歯科業界、定着率を上げるためのポイントとは」

金・銀を含む歯科材料費の高騰

歯科材料には、金や銀といった貴金属が多く使われており、資源価格や為替の影響を受けやすい特徴があります。円安の進行や国際的な資源価格の上昇が重なり、金合金・銀合金の相場はここ数年で大きく上昇しています。

こうした影響は、クラウンや義歯など保険適用の技工物にも及んでおり、材料費の増加がそのまま経営を圧迫する要因になっています。

また、患者数が増えるほど材料の使用量も増えるため、売上が伸びても利益率が改善しにくいという状況も生まれやすくなっています。

出典:厚生労働省「歯科用貴金属価格の随時改定について


保険診療は価格が変えられない

一般的な小売業や飲食店であれば、仕入れ値が上がれば価格に転嫁することができます。しかし、歯科医院では保険診療が中心となるため、診療報酬は公的に定められており、医院の判断で価格転嫁することはできません。保険点数は改定のサイクルがあるため、材料費や人件費が上がってもすぐには反映されず、コスト増との間にズレが生じやすい構造になっています。

自由診療であれば価格設定の裁量を持つことができますが、患者層や地域特性によっては自由診療への移行が難しい医院もあり、保険診療への依存から抜け出せないケースもあります。

歯科医院が活用できる支援制度

物価高による負担増に対応するうえで、まず把握しておきたいのが活用できる支援制度です。「知らなかった」では損をするケースもあるため、活用できる支援制度を押さえておきましょう。

  

歯科診療所への支援金

物価高騰や人件費の上昇に対応するため、医療機関向けの支援制度が設けられており、令和8年度も引き続き実施されています。その一環として、歯科診療所にも支援金の支給が行われています。

標準的な無床歯科診療所では、指定の要件を満たした場合に1施設あたり約32万円が支給される仕組みとなっており、内訳は以下の通りです。

● 賃上げ対応分:15万円
● 物価高騰対策分:17万円

申請については、各自治体により順次受付が行われており、専用の申請システムを通じて手続きが進められています。申請期限や支給時期の目安も示されていますが、診療所については都道府県ごとに運用が異なるため、具体的な手続きは各自治体の案内に沿って確認する必要があります。

出典:厚生労働省 「医療機関等における賃上げ・物価上昇支援事業について」 「令和8年度(令和7年度からの繰越分) 医療機関等における賃上げ・物価上昇に対する支援事業の実施について」


ベースアップ評価料と人件費対応

令和6年度の診療報酬改定では、医療機関で働く職員の賃上げを後押しするため、「ベースアップ評価料」が新設されました。これは、職員の賃金改善を行った場合に、その原資の一部を診療報酬として評価する仕組みです。

制度のポイントは以下の通りです。
・ 歯科医師以外の職員(歯科衛生士・事務職員など)の賃上げが対象
・ 賃金改善の実施を前提として評価料を算定できる
・ 人件費の増加分をすべて補填するものではないが、継続的な賃上げを支える制度

算定にあたっては、以下のような対応が求められます。
・ 賃金改善の実施および計画の作成
・ 届出の提出
・ 実際に賃上げに充てられているかの確認

人件費の上昇が続く中で、賃上げと経営のバランスを考える際に、活用を検討しておきたい仕組みです。

出典:厚生労働省「ベースアップ評価料等について


今後の支援制度(補助金・助成金)

国や地方自治体からは、医療機関向けの補助金や助成金が随時公募されています。歯科医院でも活用できる制度としては、次のようなものがあります。

・設備投資に関する補助(デジタル化・AI導入補助金、省エネ設備の導入支援など)
・雇用、人材に関する助成(キャリアアップ助成金など)
・生産性向上や業務効率化を目的とした支援制度(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金、小規模事業者持続化補助金、働き方改革推進支援助成金など)

こうした制度は公募期間が限られているものも多く、情報を把握していないと申請の機会を逃してしまうこともあります。そのため、日頃から顧問の税理士や社労士と情報を共有しながら、活用できる制度がないかを確認しておくことが、結果として経営の負担を軽減することにもつながります。

出典:「デジタル化・AI導入補助金」  「省エネ設備の導入支援」 「キャリアアップ助成金」 「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」 「小規模事業者持続化補助金」 「働き方改革推進支援助成金

物価高に対応する経営対策

支援制度の活用だけでなく、医院の中でできる見直しも重要になります。コストと収益のバランスをどう整えていくか、具体的に考えていきましょう。

  

材料費と仕入れの見直し

材料費の見直しは、経営改善の中でも比較的着手しやすい改善ポイントのひとつです。複数の歯科材料の仕入れ先から見積もりを取り直すだけでも、同等品をより低価格で調達できることがあります。

また、使用頻度の低い材料の在庫を見直したり、発注ロットを調整したりすることで、資金繰りの負担を軽くすることもできます。歯科医師会や購買グループを通じた共同購入を活用できる場合もあります。

材料費は「削れるコスト」ではなく「最適化できるコスト」として捉えることで、品質を維持したまま改善につなげやすくなります。

●あわせて読みたいコラム:「歯科医院の在庫管理を見直す|欠品・廃棄・過剰在庫を防ぐ実践的な改善方法」

診療報酬改定への対応と算定の最適化

近年の診療報酬改定では、物価高や人件費上昇を踏まえた評価の見直しも進められています。ベースアップ評価料をはじめ、各種加算の新設や要件の変更などにより、適切に算定を行うことで収益改善につながる余地が広がっています。

一方で、制度を十分に把握できていない場合や、運用が追いついていない場合には、本来得られるはずの収益を取りこぼしてしまう可能性もあります。

そのため、改定内容を正しく理解し、自院の診療体制や算定方法を見直すことが、物価高への対応策のひとつとして重要になっています。

自由診療の強化

保険診療中心の収益構造は、人件費や材料費の上昇の影響を受けやすく、物価高の局面では負担が大きくなりやすい傾向があります。一方で自由診療は、物価高の影響を踏まえながら医院の判断で価格設定を行いやすい特徴があります。そのため、ホワイトニングや審美補綴、矯正、予防メンテナンスなど、患者さんのニーズに合った自由診療を整えていくことで、収益源を分散させることができます。

自由診療の強化は、単に患者単価を上げるというだけでなく、患者さんとの関係性を深め、継続的な来院につなげる側面もあります。まずは既存の患者さんに対して、予防やメンテナンスといった取り入れやすい内容から提案していくことで、無理のない形で広げていくことができます。

診療効率の向上

スタッフ数や診療時間が同じでも、オペレーションの組み方次第で1日の診療件数は変わってきます。予約管理の見直しやスタッフの動線整理など、現場の無駄な時間を減らすことで、診療の回転を上げることができます。

特に、スタッフ間の業務内容を見直すことで、院長が診療に集中できる時間を確保しやすくなります。診療効率が上がれば、コストを増やさずに収益の底上げにもつながります。

リピート率・紹介患者の増加による来院数の安定化

歯科医院の経営を安定させるためには、既存患者のリピート率を高めることや、紹介による新規患者を増やすことも重要です。新規患者の獲得に比べて、既存患者に継続して来院してもらう方がコストを抑えやすく、安定した収益につながります。

定期検診やメンテナンスの必要性を丁寧に伝え、次回予約の案内やリマインドを行うことで、無理なく来院の継続を促すことができます。また、日々の接遇や説明の分かりやすさ、院内環境の整備といった積み重ねが、患者満足度の向上や紹介・口コミの増加につながります。

DXによる業務効率化と生産性向上

オペレーション改善をさらに一歩進めるのが、ITの活用です。レセコンなどのシステムを組み合わせることで、日々の業務を無理なく効率化することができます。
DXというと大がかりな取り組みを想像されることもありますが、目的はシンプルで、スタッフの手間を減らし、利益が残る体制をつくることです。そのためには、まず現在の業務の進め方を見直すことが出発点になります。

スタッフの負担を減らすための考え方

人件費を抑えるために採用を絞ることは、短期的にはコスト削減につながりますが、スタッフへの負担が増え、結果的に離職につながるリスクもあります。

重要なのは、「人を増やすかどうか」ではなく、「今の体制でどう回すか」という視点です。業務の優先順位を見直したり、役割分担を整理したりすることで、無理のない形で診療体制を維持できる場合もあります。

こうした見直しを前提に、必要に応じてITを取り入れていくことで、スタッフの負担を抑えながら生産性を高めていくことができます。


レセコン・IT活用による業務効率化

受付や事務業務の負担を減らすには、ITツールの活用が効果的です。電子カルテや予約管理、問診票のデジタル化などを組み合わせることで、日々の業務を無理なく効率化できるようになります。近年では、患者さんのITリテラシーも向上しており、Web予約やデジタル問診、キャッシュレス決済などへの抵抗感も少なくなっています。

その中でレセコンは、請求業務の中心となるだけでなく、他のシステムと連携することで業務全体の流れをスムーズにする役割を担います。会計処理や予約管理、リマインド対応などをシステム化することで、これまでスタッフが手作業で行っていた業務の手間を減らすことができます。

さらに、自動精算機などを導入することで、スタッフの業務負担を軽減できるだけでなく、働きやすい職場環境づくりにもつながり、採用面でプラスに働くケースもあります。

こうした体制を整えることで、限られたスタッフ数でも診療体制を維持しやすくなり、収益の安定にもつながります。


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まとめ

物価高騰は一時的なものではなく、今後も歯科医院経営に影響を与え続けると考えられます。人件費や材料費の上昇に対しては、支援金やベースアップ評価料といった制度を適切に活用しながら、経営体質そのものを見直していくことが重要です。

とくに、コスト削減だけに頼るのではなく、診療効率の見直しや自由診療の強化、ITやレセコンを活用した業務の省力化など、収益を生み出す仕組みづくりに目を向けることが重要です。

外部環境に左右されにくい経営にするためにも、無理のない形で仕組みを整えていくことが大切です。こうした時代だからこそ、地域に根ざした診療や専門性、接遇力といった自院の強みをあらためて見直し、価格だけに頼らない価値を育てていくことが求められています。


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│投稿者│株式会社ミック デジタルマーケティングチーム

株式会社ミックが運営する歯科医院さま向けのコラムです。
弊社デジタルマーケティングチームが歯科にまつわるトレンド情報を定期的に発信しています。

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